太鼓はいいものを選びましょう。多分、アフリカのミュージシャンにとって太鼓とは、日本の侍にとっての刀のようなものでしょうか。ある民芸品屋で太鼓の仕入れをしていた頃に、マリの某ジャンベドラマーにその品質をお伺いしたところ、鼻で笑われたことがありました。「おぬし笑ったな」と、その場で抜き打ちにして進ぜようかと鼻息を荒げたものでしたが、今から思えば、私の刀は竹光だったようで、恥ずかしいことでした。
 今では、私の仕入れる太鼓は、その某ミュージシャンもそこから演奏用の太鼓を調達するという、名人中の名人が作られるものであります。これ以上やると商売臭くなるのでやめにしましょう。でも、太鼓はいいものに限る、これは言えてますよ。

 現地に行くと適当に先生を選んで、レッスンをしてもらいます。何とも奥が深い太鼓のリズム。日本で言えば、茶道とか華道とかの芸事にあたるのでしょうか? 音で日常行事や、挨拶、接待、何でも表現してしまう。驚きでした。
 でも物覚えの悪い私は、いつでも初歩の初歩からやらされて多少やぶにらみ状態・・  バイエルから先に進めない落第生でした。

 音が聞こえてきませんか? アフリカを歩くと、音とにおいとが混ざり合って常に機械文明圏から来たわれわれの脳を刺激します。東アフリカをはじめて歩いたときに何か懐かしいようなにおいにどこに行ってもまみれていて、それが炭を焼くにおいだと気が付いたのは、日本に帰って河原でバーベキューをしていたときのことでした。なーるほど。料理に使う炭が燃え、それに肉や野菜の煮汁が混ざるとアフリカのにおいなんだ。
 そして西アフリカを歩いて何より刺激を受けたのが、太鼓の音、踊りの声、リズム、リズム、リズム。

太鼓

アフリカ写真館